まつ毛は、毛周期にしたがって成長と退行を繰り返しています。そのためまつ毛を育てるためには、毛周期についてよく理解したうえで適切なケアをすることが大切です。まつ毛はどのようなメカニズムで育つのか、まつ毛はどのくらいのスピードで成長し、いつ抜けるのか。

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ここでは、まつ毛の毛周期についてわかりやすく解説します。

【1】まつ毛は生まれ変わっている

まつ毛は生まれ変わっている
まつ毛は髪の毛に比べて短く、量も多くありません。そのためまつ毛が抜けたり伸びたりしても気付きにくいですし、そのこと自体に無頓着という方も少なくないでしょう。しかし私たちが気付くかどうかに関係なく、まつ毛は日々成長し、生まれ変わっています。

(1)毎月30~90本ものまつ毛が抜けている!?

いま生えているまつ毛は、永遠にそこに存在し続けるわけではありません。強い力が加わったり、小さな負担が蓄積されたり、寿命を迎えたり…。理由は様々ですが、まつ毛は毎日少しずつ抜けています。

実際、日本人女性を対象にまつ毛が抜ける本数の調査をしたところ、1ヶ月あたり両目で約30~90本のまつ毛が抜けていることがわかりました。日本人女性のまつ毛の平均本数は約200~300本(両目)だといわれていますので、毎月90本抜ける人の場合、いま生えているまつ毛の約3割を失っている計算になります。

(2)まつ毛が減らないのは新しく生えてくるから

多い人で、毎月まつ毛の約3割がなくなっている…。そんな話を聞くと、「まつ毛なんてあっという間になくなってしまうのではないか」と不安になるでしょう。しかし皆様、ご自身の目元をチェックしてみてください。まつ毛、なくなっていませんよね?

毎月たくさんのまつ毛が抜けているにも関わらず、なぜまつ毛がなくならないのか…。それは、新しいまつ毛がどんどん生えてきているからです。つまり私たちのまつ毛は、日々生まれ変わっているということができます。

【2】まつ毛の毛周期|そのメカニズムとは?

抜けたり生えたりすることで、日々生まれ変わっているまつ毛。では、このまつ毛の生まれ変わりは、どのようなメカニズムで進んでいくのでしょうか。実はそこには、「毛周期」が深く関係しています。ここからは、まつ毛の成長における重要ポイントである「毛周期」について詳しくみていきましょう。

(1)「毛周期」とは?その概要について

これはまつ毛に限ったことではありませんが、人の体毛は一定期間成長し続けた(伸び続けた)あと、その活動を停止し、自然に抜け落ちます。そして抜け落ちた部分の毛母細胞はしばらくお休み期間に入りますが、時期がくると活動を再開してまつ毛を成長させます。

この「成長→退行→休止」というサイクルのことを、「毛周期」と呼ぶのです。

(2)まつ毛はどのくらいのスパンで生まれ変わる?

まつ毛が生えてから抜けるまでにかかる期間は、約3~5ヶ月だと考えられています。ただしまつ毛が抜けたあとその成長が完全に止まる期間が4ヶ月程度ありますので、毛周期全体としては、長くて9カ月くらいになります。

毛周期には個人差があり、短いから良い、長いから良い、というわけではありません。大切なのは、毛周期を乱さずまつ毛を生まれ変わらせることなのです。そしてそのためには、その周期に合ったまつ毛ケアをするとともに、まつ毛が成長しやすいような体質づくりにも取り組む必要があります。

【3】まつ毛の毛周期|それぞれの周期について

まつ毛の毛周期は、成長期・退行期・休止期という3つのターンに分けられます。ここからは、これらひとつひとつのターンで何が行われているのか、詳しくみていくこととしましょう。

(1)成長期

まつ毛は、毛母細胞が活動し、何度も細胞分裂を繰り返すことによって少しずつ伸びていきます。成長期はまさにこの現象が起こる期間であり、今までお休みしていた毛母細胞が、活動を再開します。

■早期成長期

早期成長期では、毛母細胞が少しずつ活動を再開します。それに伴いまつ毛も少しずつ伸びていくのですが、この段階のまつ毛は細く弱く、肌表面に出てきても気付かれにくい状態にあります。

■中期成長期

成長期も中ごろに入ると、ハリとコシのあるしっかりとしたまつ毛に育ってきます。ただしその長さはまだ短く、肌表面に出ているのは毛先部分であるためまだまだ貧弱そうなまつ毛に見えます。

■後期成長期

後期成長期になるとまつ毛が太く長く育ち、肌表面に見えているまつ毛もしっかりしたものになっています。

成長期におけるまつ毛は、段階を経ながら太く長く育っていきます。後にやってくる退行期・休止期においてまつ毛が成長することはありませんので、この時期にどんなケアができるかによって、どんなまつ毛が育つのかが決まります。

(2)退行期

退行期になると、まつ毛の毛根部にある毛母細胞の分裂が止まります。するとそれに伴い、まつ毛の成長も止まります。つまり退行期のまつ毛はその長さがMAXまで育ったものであるため、これ以上太くなったり長くなったりすることはありません。「退行期」というとまつ毛が衰えていくようなイメージがありますが、長さ・太さともにMAXの状態になるのがこの時期なのです。

これ以上まつ毛が成長しない、という意味では、まつエクの施術をするのに最も適した時期であるともいえるでしょう。

(3)休止期

休止期における毛母細胞は、その活動を完全に停止させています。そのため退行期同様、まつ毛が育つことはありません。また「活動を停止」といっても本当に何もしていないわけではなく、新しく次のまつ毛を生やすための準備をしています。

そして新たなまつ毛が育ってくると、それに押し出されるような形で古いまつ毛は自然に抜け落ちます。

【4】毛周期が乱れるとどうなる?

一定周期ごとに抜けたり生えたり伸びたりを繰り返しているまつ毛ですが、何らかの原因によって毛周期が乱れてしまうことがあります。毛周期における成長期が、通常よりも短くなってしまうのです。

成長期が短くなると、まつ毛は十分に成長することができません。また上でも説明したように、その後やってくる退行期・休止期においてまつ毛が成長することはありません。そのためまつ毛の成長期が短くなると、細くて短い、不完全なまつ毛ばかり生えてくるようになります。

また十分に成長していないまつ毛の定着力はとても弱く、ちょっとしたことが原因で抜けてしまうこともあります。

(1)毛周期が乱れる原因

毛周期は、様々なことが原因となって乱れてしまいます。

■ホルモンバランスの乱れ

女性ホルモンには、体毛の成長を促進する効果があります。そのため女性ホルモンの分泌量が減少したり、男性ホルモンの分泌量が増したりしてホルモンバランスが乱れると、その影響を受けて毛周期が乱れ、まつ毛が育ちにくくなってしまうのです。

■食生活や睡眠などの生活習慣

まつ毛のもとである毛母細胞を含め、私たちのからだをつくる全ての細胞は、口から入ってきた栄養素をエネルギー源に活動しています。そのため栄養バランスの偏った食事ばかりだったり、暴飲暴食をしたりしていると、その影響によってまつ毛の毛周期が乱れることがあります。

また睡眠不足も、毛周期を狂わせる原因になります。睡眠時間が足りなかったり、睡眠の質が悪かったりすると、毛母細胞に指令を出す成長ホルモンの分泌量が不足します。するとその影響によって毛母細胞が十分活動しなくなり、結果的に毛周期が乱れてしまうのです。

■喫煙による血行不良

喫煙も、まつ毛の毛周期を乱れさせる原因になる場合があります。たばこを吸うと体内にニコチンやタールが取り込まれますが、これらの有害物質は血流を悪化させます。まつ毛の根元にある毛母細胞は毛細血管内を流れる栄養素を取り込んで成長していきますので、血流が悪くなると毛母細胞が栄養不足状態になり、きちんと育ちません。このような現象が続いていくうちに、まつ毛の成長期が短くなりその毛周期が乱れることがあるのです。

【5】毛周期に合わせたまつ毛ケアが効果的

まつ毛は、一定のサイクルにしたがって成長しています。そのためまつ毛を長くするためには、毛周期に合ったケアをする必要があります。ここからは、毛周期に合わせたまつ毛ケアのやり方について、具体的にみていきましょう。

(1)まずは抜けまつ毛を減らそう

上でも説明したように、まつ毛はその寿命を終えると、新しく育ってきたまつ毛に押し出されるような形で自然に抜けていきます。

つまり「まつ毛が抜ける」ことは生理現象のひとつであり、そこまで神経質に考える必要はありません。

しかし、成長期の途中でまつ毛が抜けてしまっているとなると、話は変わってきます。まつ毛が成長しきる前に抜けることが続くと、その影響によって成長期が短くなることがあるのです。また、まつ毛に負担をかけていると毛母細胞がダメージを受けて、成長期にまつ毛を十分伸ばすことができない、といった事態に陥ってしまう場合もあります。

以下のような行為はまつ毛にダメージを与えたり、まつ毛が抜けたりする原因になりますので、気をつけましょう。

・マスカラを何度も重ね塗りする
・ゴシゴシこすってマスカラをオフする
・不十分なすすぎにより、洗顔料をまつ毛やその生え際に残してしまう
・まつエク
・つけまつ毛
・つけまつ毛を無理に引っ張って取る

(2)成長期にあるまつ毛を徹底的にケア

まつ毛は、毛周期のうち成長期にだけ育ち、退行期・休止期に伸びたり太くなったりすることはありません。そのため立派なまつ毛を育てるためには、成長期に徹底したまつ毛ケアをすることが大切です。

■保湿をして毛母細胞の状態を整える

人の細胞は、乾燥するとその構造が崩れたり、活動量が減ったりします。そこでまずは、まつ毛の生え際の保湿をして、毛母細胞やその周りの水分量を保ちましょう。毛母細胞をより良い状態に保てば、健康なまつ毛が育ちやすくなります。

また既に生えているまつ毛も、乾燥すると傷付きやすくなったり切れやすくなったりします。そのため保湿ケアは、根元部分とまつ毛の両方にすることが大切です。

■まつ毛美容液で栄養補給

成長期のまつ毛ケアには、まつ毛美容液を活用するのもおすすめです。まつ毛美容液には、保湿効果や栄養補給効果がありますし、まつ毛をコーティングして様々な刺激から守る効果もあるからです。ヘアケアでいうところのトリートメントをイメージしていただくと、わかりやすいかもしれません。

まつ毛美容液には様々な種類がありますが、まつ毛だけでなく根元部分にも塗るタイプのものを使うといいでしょう。まつ毛の生え際にもしっかり栄養を補給することで、より丈夫で長いまつ毛を育てる効果が期待できます。

(3)食事や睡眠にも気をつけよう

上述のようにまつ毛の毛周期は、毎日の食事や睡眠が原因となって乱れてしまうこともあります。食事や睡眠は日々の積み重ねで少しずつ改善していくことができますので、外食が多い方や寝不足気味の方は、以下のような対策を試してみてください。

■まつ毛の成長に効果的な食事

毛母細胞は、「ケラチン」という物質を主成分につくられます。そしてこのケラチンは、タンパク質からつくられます。そこでまずは、毎日の食事にタンパク質が含まれる食材を取り入れてみましょう。動物性タンパク質は魚や乳製品、卵などに、植物性タンパク質は大豆製品に多く含まれていますので、両方をバランスよく体内に取り入れることが大切です。

■まつ毛の成長に効果的な睡眠

まつ毛の成長を促進するためには、睡眠不足を解消することも大切です。寝つきが悪くて困っているという方は、以下のような対策を試してみてください。ぐっすり眠れるようになるかもしれません。

・適度な運動をする(サイクリングやジョギングなど)
・体を冷やさない
・部屋を暗くする
・寝る前にパソコンやスマホを使わない
・ストレッチをする

上記のような対策は、睡眠の質を向上させるうえでも大変効果的です。良質な睡眠は良質なまつ毛を育てますので、夜中によく目が覚めてしまう方や夢をみることが多い方、眠りが浅い方も、ここでご紹介した対策を試してみてはいかがでしょうか。

さいごに

まつ毛の毛周期には、成長期・退行期・休止期という3つのターンがあります。これらのうち成長期にはまつ毛がどんどん成長するのですが、退行期になるとまつ毛の毛母細胞がその活動をやめ、休止期に入ると完全にお休みモードになってしまいます。まつ毛を長くするには成長期に適切なケアをすることが大切ですので、まつ育に興味を持っている方はまず、生活習慣の見直しやまつ毛の保湿など、できることから始めてみましょう。